年金受給者は確定申告が不要?知っておきたい「得する可能性」と手続きのポイント
年金を受給されている方の多くは、「確定申告は不要」だと思っていらっしゃるかもしれません。確かに、一定の条件を満たせば、確定申告をする必要はありません。しかし、場合によっては確定申告をすることで税金が還付され、「得をする可能性」があることをご存知でしょうか?
今回は、年金受給者の方の確定申告の基本から、どんな場合に確定申告をした方がお得になるのか、そして手続きのポイントまで、分かりやすく解説していきます。
年金受給者が確定申告「不要」となる条件
まず、年金受給者が確定申告をしなくてよいのは、どのようなケースでしょうか。
原則として、以下の2つの条件を両方満たしている場合は、確定申告が不要とされています。
公的年金等の収入金額の合計額が400万円以下
公的年金等とは、国民年金や厚生年金、共済年金などを指します。
複数の年金を受給している場合は、その合計額で判断します。
公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下
公的年金以外の所得とは、例えば個人年金保険や企業年金、原稿料、講演料、不動産所得、給与所得(パート収入など)などが該当します。
これらの所得の合計額が20万円を超えると、確定申告が必要です。
この制度は、「確定申告不要制度」と呼ばれ、年金受給者の申告手続きの負担を軽減するために設けられています。
ただし、確定申告が不要な場合でも、確定申告をすることで税金が戻ってくる(還付される)ケースがあるので注意が必要です。
確定申告で「得する可能性」があるケースとは?
では、どのような場合に確定申告をすると税金が還付される(得する)可能性があるのでしょうか。
主に、以下のケースが挙げられます。
1. 医療費控除を適用できる場合
年間で支払った医療費の合計額が一定額を超えた場合、医療費控除を適用できます。
ご自身や生計を同一にする家族のために支払った医療費(病院の診察代、薬代、入院費、交通費など)が対象となります。
年金から所得税が源泉徴収されている場合、医療費控除を適用することで、納めすぎた税金が還付される可能性があります。
2. 社会保険料控除が正しく適用されていない場合
国民健康保険料や介護保険料、国民年金保険料などは、支払った全額が社会保険料控除の対象となります。
年金から天引きされている分は自動的に控除されますが、年金から天引きされていない社会保険料(例えば、ご自身で納付した国民年金保険料や、ご家族の社会保険料を支払った場合など)がある場合は、確定申告で追加して控除を適用できます。
3. 生命保険料控除や地震保険料控除を受けられる場合
生命保険や医療保険、個人年金保険などに加入している場合、生命保険料控除を適用できます。
また、地震保険に加入している場合は、地震保険料控除を適用できます。
これらの控除は、年金の源泉徴収時には考慮されていないことがあるため、確定申告で適用することで税金が戻ってくる可能性があります。
4. 寄付金控除を適用できる場合
ふるさと納税や、特定の団体に寄付をした場合、寄付金控除を適用できます。
寄付金控除も、年金の源泉徴収時には考慮されない控除です。
5. 配偶者控除や扶養控除の適用漏れがある場合
年金受給者の場合でも、配偶者控除や扶養控除、障害者控除などが適用されることがあります。
特に、扶養している親族が増えたり、障害者控除の対象になったりした場合など、状況に変化があった際には確認が必要です。
これらの控除が正しく適用されていない場合は、確定申告で適用することで税金が還付される可能性があります。
6. 災害や盗難などで損失を受けた場合(雑損控除)
災害(地震、火事、風水害など)や盗難、横領などによって、ご自身や扶養している家族の資産に損害を受けた場合、雑損控除を適用できる可能性があります。
7. 年金の源泉徴収税額がある場合
上記のような控除を適用して所得税額が減少しても、そもそも年金から所得税が源泉徴収されていなければ、還付される税金はありません。
お手元にある「公的年金等の源泉徴収票」を確認し、「源泉徴収税額」の欄に金額が記載されているかを確認しましょう。
確定申告の手続きとポイント
確定申告をして税金の還付を受けるためには、確定申告の手続きを行う必要があります。
必要書類の準備
主に以下の書類が必要になります。
公的年金等の源泉徴収票: 年金支払者から送られてきます。
医療費控除の明細書: 1年間の医療費をまとめたもの。領収書は提出不要ですが、5年間保管が必要です。
生命保険料控除証明書、地震保険料控除証明書: 各保険会社から送られてきます。
社会保険料控除証明書: 国民年金保険料を納付した場合などに送られてきます。
寄付金の受領書: 寄付先から送られてきます。
マイナンバーカード(または通知カードと身元確認書類)
還付金受取用の預貯金口座情報
申告期間
原則として、毎年2月16日から3月15日までが確定申告の期間です。
ただし、税金が還付される「還付申告」の場合は、翌年の1月1日から5年間、いつでも申告が可能です。
申告方法
e-Tax(電子申告): 国税庁のホームページから、パソコンやスマートフォンを使って申告できます。最も手軽で便利な方法です。
税務署で申告書を作成・提出: 税務署の窓口で相談しながら申告書を作成し、提出する方法です。
郵送: 作成した申告書を税務署に郵送する方法です。
ポイント
早めに準備を始める: 必要書類を揃えるのに時間がかかる場合があるので、早めに準備に取り掛かりましょう。
不明な点は税務署に相談: 申告内容に不安がある場合や、手続き方法が分からない場合は、最寄りの税務署や税務相談窓口に問い合わせてみましょう。国税庁のホームページでも詳しい情報が確認できます。
「公的年金等の源泉徴収票」は必ず確認!: ここに記載されている内容が、確定申告のベースになります。
まとめ:確定申告で賢く税金を取り戻そう!
年金受給者の方で、確定申告が不要なケースは多いですが、医療費や生命保険料の支払いなど、様々な控除を適用することで税金が還付され、手元にお金が戻ってくる可能性があります。
特に、年金から所得税が源泉徴収されている場合は、還付される可能性が高いと言えるでしょう。
「自分は確定申告不要だから関係ない」と思わずに、一度ご自身の状況を確認し、「得する可能性」がないかチェックしてみることを強くおすすめします。
もし不明な点があれば、お近くの税務署や税理士に相談して、賢く税金を取り戻しましょう。