年金から天引きされるお金はいくら? 手取りを増やす「賢い受け取り方」ガイド
「年金って月14万円くらいって聞いたけど、手元にはいくら残るの?」
「年金から何か引かれるって本当? 結局、生活費が足りなくなったらどうしよう…」
老後の生活を支える大切な年金。平均受給額のニュースなどを見ると「月〇万円」という数字を目にしますが、実際に皆さんの手元に届く金額は、その表示額と異なることをご存知でしょうか? 実は、年金からも現役時代と同じように**「天引きされるお金」**があるため、額面通りの金額が振り込まれるわけではありません。
「手取りが減ったら、老後の生活が不安…」と感じる方もいらっしゃるでしょう。でも、ご安心ください! この記事では、年金から具体的にどんなお金がいくらくらい天引きされるのかを分かりやすく解説し、さらに手取りを少しでも増やすための賢い受け取り方や対策を徹底的にご紹介します。漠然とした不安を解消し、安心して老後の生活を送るためのヒントを見つけてくださいね。
年金から天引きされる「3つのお金」とは?
年金は、原則として偶数月に2ヶ月分がまとめて支給されます。その際、以下の3種類のお金が差し引かれます。
1. 所得税・復興特別所得税
年金は「雑所得」として所得税の課税対象となります。ただし、年金受給者には「公的年金等控除」というものが適用されるため、一定額までは税金がかかりません。この控除額は年齢や年金額によって異なりますが、例えば65歳以上で年金収入が年間110万円以下であれば、基本的に所得税はかかりません。しかし、これを超えると、超えた部分に所得税と復興特別所得税(所得税額の2.1%)がかかり、年金から天引きされます。
2. 住民税
住民税も所得税と同様に、年金から天引きされます。これは前年の年金収入に基づいて計算され、65歳以上の方には「公的年金等控除」が適用された後の金額に対して課税されます。住民税は、住んでいる市区町村や都道府県によって税率が若干異なりますが、所得税よりも住民税の方がかかるケースが多いです。
3. 社会保険料(国民健康保険料・後期高齢者医療保険料・介護保険料)
年金から天引きされる金額の中で、比較的大きな割合を占めるのが社会保険料です。
国民健康保険料:75歳未満の人が加入します。年金収入や世帯構成によって金額が決まります。
後期高齢者医療保険料:75歳以上になると、国民健康保険から後期高齢者医療制度に移行します。こちらも年金収入に応じて保険料が決まります。
介護保険料:40歳以上の全員が支払う義務があります。65歳以上になると、原則として年金からの天引きとなります。保険料は、お住まいの自治体や年金収入によって金額が変わります。
これらの社会保険料は、年金が低額の場合は天引きの対象とならないこともありますが、多くの場合、自動的に差し引かれることになります。
具体的にいくら引かれるの? 日本人の平均年金受給額の場合
では、日本人の平均的な年金受給額の場合、実際に手取りはいくらくらいになるのでしょうか?
厚生労働省の「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、国民年金(老齢基礎年金)の平均受給額は月額約5.6万円、厚生年金保険(国民年金を含む)の平均受給額は月額約14.5万円となっています。ここでは、夫が厚生年金、妻が国民年金を受け取る夫婦二人世帯で、夫の年金収入が月14.5万円(年間174万円)の場合を例に見てみましょう。
【例:夫の年金収入が年間174万円(月約14.5万円)の場合】
(※あくまで目安であり、個別の状況や地域によって異なります)
所得税・復興特別所得税: 65歳以上の場合、公的年金等控除が110万円(最低額)。
課税対象となる所得:174万円 - 110万円 = 64万円
所得税率5%を適用すると、約3.2万円(復興特別所得税含む)が年間でかかる計算になります。
→ 月々約2,600円程度
住民税: 前年の年金収入に基づいて課税。自治体や扶養状況にもよりますが、所得税よりも少し高めになることが多いです。
→ 月々約5,000円~1万円程度
社会保険料:
後期高齢者医療保険料(75歳以上の場合): 年金収入や地域によって異なりますが、例えば年間約10万円~20万円(月々約8,000円~1.6万円)程度かかる場合があります。
介護保険料(65歳以上の場合): 年金収入や地域によって異なりますが、年間約8万円~10万円(月々約6,000円~8,000円)程度かかる場合があります。
これらの税金や社会保険料を合計すると、月々約1.5万円~3万円以上が年金から天引きされる可能性がある、ということが分かります。つまり、額面14.5万円の年金でも、手取りは12万円台になる可能性も十分にあるのです。
「手取りを増やす!」年金と老後資金の賢い受け取り方・対策
年金からの天引き額をゼロにすることはできませんが、工夫次第で手取り額を増やしたり、老後の生活を安定させたりすることは可能です。
1. 年金以外の「収入源」を確保する
年金だけでは生活が不安…という場合は、年金以外の収入源を確保することが最も効果的です。
働く: 健康であれば、定年後も無理のない範囲で働くことを検討しましょう。短時間勤務やパートタイマー、シルバー人材センターなどを利用すれば、年金収入を大きく超えない範囲で、社会保険料の負担を抑えながら働くことができます。
資産運用: 預貯金だけでなく、NISAやiDeCoなどを活用した資産運用で、老後資金を増やすことも重要です。ただし、リスクを理解した上で、長期的な視点で行うことが大切です。
不動産活用: 持ち家がある場合、リバースモーゲージや賃貸に出すなど、不動産を有効活用することも考えられます。
2. 年金の「繰り下げ受給」を検討する
年金の受給開始年齢は原則65歳ですが、希望すれば最大75歳まで繰り下げることができます。
メリット: 1ヶ月繰り下げるごとに年金額が0.7%増額され、75歳まで繰り下げると最大84%も年金額が増えます。例えば月14万円が、月25万円近くになる可能性もあります。
デメリット: 繰り下げた期間は年金が受け取れないため、その間の生活費を別の貯蓄で賄う必要があります。また、長生きしないと元が取れないというリスクもあります。
健康状態や貯蓄状況、働ける期間などを考慮し、慎重に検討しましょう。
3. 「確定申告」で控除を最大限に活用する
年金からも所得税が天引きされますが、医療費控除や生命保険料控除など、適用される控除があれば、確定申告をすることで税金が還付される可能性があります。忘れずに確定申告を行い、税金の負担を軽減しましょう。
4. 社会保険料の仕組みを理解する
社会保険料は、所得や世帯状況、お住まいの自治体によって金額が大きく変わります。
自治体の制度を確認: 各自治体で、保険料の減免制度や独自の軽減制度がないか確認してみましょう。
世帯の所得を考える: 夫婦の場合、どちらか一方の年金収入が突出していると、保険料負担が大きくなることがあります。夫婦でバランスよく年金を分ける「年金の分割制度」なども検討できます(特定の条件あり)。
5. 家計の「見直し」と「節約」を徹底する
収入を増やすだけでなく、支出を減らすことも手取りを増やすのと同じくらい重要です。
固定費の見直し: 通信費(スマホのプラン)、保険料、サブスクリプションサービスなど、毎月固定でかかる費用を見直しましょう。
変動費の意識: 食費や光熱費など、日々の生活費を意識して節約に努めましょう。
健康維持: 医療費を抑えるためにも、日頃から健康に気をつけ、病気にならないように心がけることが大切です。
まとめ:年金の手取りを理解し、不安のない老後設計を!
年金から天引きされるお金があることは事実ですが、それは公的なサービスや将来の医療費などを支えるための大切な費用でもあります。重要なのは、「実際にいくら手元に残るのか」を正しく理解し、それに基づいて老後の生活設計を立てることです。
年金以外の収入源の確保、繰り下げ受給の検討、確定申告での控除活用、そして日々の家計の見直しや節約など、できることはたくさんあります。
漠然とした不安に囚われるのではなく、早めに具体的な対策を立て、一つずつ実行していくことで、あなたはきっと、安心して豊かな老後を送ることができるでしょう。あなたの安心な未来のために、今できることから始めてみませんか?