お盆の迎え火・送り火ってどうするの?マンションでもできる?
夏になると、故郷を思い出す「お盆」の季節がやってきますね。ご先祖様をお迎えし、お見送りする日本の美しい伝統行事の一つに「迎え火(むかえび)」と「送り火(おくりび)」があります。
「昔は実家でやっていたけれど、マンションでもできるのかな?」「具体的なやり方や意味を知りたい」と感じている方もいるかもしれません。今回は、お盆の迎え火・送り火について、その意味や伝統的なやり方、そしてマンションや都市部での現代的な工夫まで、分かりやすくご紹介します。
迎え火・送り火って何?その意味を知ろう
迎え火と送り火は、お盆に帰ってくるご先祖様の魂が、迷うことなく家に来て、またあの世へ帰っていけるようにするための「道しるべ」となる火です。
迎え火(むかえび):
いつ? お盆の入りである8月13日(地域によっては7月13日)の夕方。
意味: ご先祖様の魂が迷わずに家までたどり着けるように、明るい火を焚いてお迎えします。
送り火(おくりび):
いつ? お盆明けの8月16日(地域によっては7月16日)の夕方。
意味: 家でゆっくり過ごしたご先祖様の魂が、また滞りなくあの世へ帰っていけるように、火を焚いてお見送りします。
この迎え火と送り火は、ご先祖様への感謝と、無事を願う気持ちが込められた、大切な供養の形なのです。
伝統的な迎え火・送り火のやり方
昔ながらの迎え火・送り火は、主に庭先や玄関先で行われていました。
用意するもの:
焙烙(ほうろく): 素焼きのお皿。火を焚くための台になります。
麻がら(おがら): 乾燥させた麻の茎。火をつけやすく、燃えやすいのが特徴です。
マッチやライター
迎え火のやり方(8月13日夕方):
玄関先や庭先の安全な場所に焙烙を置きます。
焙烙の上に麻がらを積み重ね、火をつけます。
火が燃え上がったら、ご先祖様をお迎えする気持ちを込めて、手を合わせましょう。火は、自然に燃え尽きるまで見守ります。
送り火のやり方(8月16日夕方):
迎え火と同じように、安全な場所に焙烙を置いて麻がらを燃やします。
ご先祖様の魂が無事にあの世へ帰れるよう、感謝の気持ちを込めてお見送りします。
地域によっては、お供え物を一緒に燃やしたり、精霊流し(しょうろうながし)を行ったりすることもあります。
マンションや集合住宅でもできる?現代のお盆の迎え火・送り火
「マンション暮らしだから、火を焚くのは難しい…」そう思われる方も多いでしょう。火を使う迎え火・送り火は、マンションの規約や消防法の関係で難しい場合がほとんどです。しかし、ご先祖様への気持ちは、形を変えても伝えることができます。
1. 玄関で提灯や電気ロウソクを灯す
火を焚くのが難しいマンションでは、光でご先祖様をお迎え・お見送りする形が一般的です。
盆提灯: 玄関先やベランダ、窓際などに盆提灯を飾るのが一般的です。最近では、コードレスで安全な電池式の提灯も増えています。盆提灯の灯りが、ご先祖様への道しるべとなります。
電気ロウソク: 仏壇や盆棚に電気ロウソクを灯すのも良いでしょう。炎のように揺らめくタイプもあり、安全に雰囲気を出せます。
LEDライト: 現代的なデザインのLEDライトや、電池式の小さなライトを玄関に置くのも、光で迎えるという意味では同じです。
2. 火を使わない「ほうろく」と「麻がら」の活用
実際に火をつけられない場合でも、形だけでも用意することで、気持ちを伝えることができます。
ミニチュアほうろく・麻がら: 小さな焙烙と麻がらを、火をつけずに玄関やベランダ、お盆飾りの横に置いておく。
「ほうろく飾り」: 火をつけない代わりに、焙烙と麻がらを模した飾りを置くなど、視覚的に迎え火・送り火の代わりとする方法もあります。
3. お盆飾りの工夫
お盆の期間中、仏壇の近くに「盆棚(ぼんだな)」や「精霊棚(しょうりょうだな)」を設けて、お供え物やキュウリとナスで作った精霊馬(しょうりょううま)を飾るのも、ご先祖様を丁寧にお迎え・お見送りする大切な行いです。
精霊馬(しょうりょううま): キュウリを馬に見立てて「早く帰ってきてほしい」、ナスを牛に見立てて「ゆっくり帰ってほしい」という願いが込められています。
お供え物: 故人様が好きだった食べ物や飲み物、季節の果物などをお供えします。
これだけは押さえておきたい!注意点とマナー
火の元には十分注意: 伝統的な迎え火・送り火を行う場合は、必ず風のない安全な場所を選び、バケツに水を用意するなど、万全の注意を払いましょう。燃えやすいものの近くでは絶対に行わないでください。
マンションの規約確認: マンションやアパートにお住まいの場合は、火の使用に関する規約を必ず確認してください。ベランダでの火気使用は禁止されていることがほとんどです。
地域の風習を確認: お盆の迎え火・送り火の時期や方法は、地域や宗派によって異なる場合があります。ご実家や地域の詳しい方に確認してみるのも良いでしょう。
ご先祖様への感謝の気持ち: 大切なのは、形式にとらわれすぎず、ご先祖様への感謝と敬う気持ちです。マンションで火が焚けなくても、心の中で手を合わせ、故人様を偲ぶことが何よりも大切です。
まとめ:形は変われど、心は変わらず
お盆の迎え火・送り火は、ご先祖様との絆を感じる日本の美しい伝統です。現代の住環境では、伝統通りの方法が難しい場合も増えていますが、提灯や電気ロウソクを使ったり、お盆飾りを工夫したりと、様々な形で故人様を敬う気持ちを伝えることができます。
大切なのは、形式にこだわりすぎず、ご先祖様への感謝の気持ちを忘れずに、心を込めてお迎え・お見送りをすることです。このお盆が、あなたとご家族にとって、温かい時間となりますように。